2020/08/27 公開

Samsung SSD 960 PRO について

本来なら「ASRock X399 Taichi」マザーを購入した2018年1月に公開する予定でしたがちょっと公開を逸してしまいました。RAID設定を掲載しているので個人的な備忘記録として公開します。
「ASRock X399 Taichi」マザーではM.2 SSD でのRAID設定が可能ですので、この当時としては最速の「Samsung SSD 960 PRO」を使用してRAID設定を行いました。ベンチマークも取得しましたがGen3としては今でも色褪せない結果になっています。

Samsung SSD 960 PRO の概要と特徴

「Samsung SSD 960 PRO」は広帯域で低レイテンシのPCIe Gen 3 x4レーンをサポートするNVMeネイティブのSSDです。48層のSamsung V-NANDベースのアーキテクチャを採用しています。「Samsung SSD 960 PRO」は容量が512GB/1TB/2TBの3種類が用意されています。

1.Samsung SSD 960 PRO 製品仕様

Samsung SSD 960 PRO 512GB (MZ-V6P512B/IT)仕様
コントローラー
容量

インタフェース
シーケンシャル読込速度
シーケンシャル書込速度
ランダム性能 4kリード
ランダム性能 4kライト
Samsung自社製コントローラ
512GB
Samsung V-NAND フラッシュメモリ
PCIe3.0 × 4、NVMe1.2
3,500MB/s
2,100MB/s
14,000 IOPS
50,000 IOPS


Samsung SSD 960 PRO 512GB (MZ-V6P512B/IT) 製品パッケージ

Samsung SSD 960 PRO 512GB (MZ-V6P512B/IT)

2.Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプター

最近のマザーボードにはM.2ソケットが搭載されていますが、少し前のマザーにはM.2ソケットが搭載されていませんでしたが、M.2 SSDを使用する場合、PCIe 3.0 x4 アダプターが必要になります。
今回、Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプターを購入しましたのでM.2 SSDのベンチ性能を検証してみました。
Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプター

測定環境
CPU intel Core i7 4930K( 4.0GHz OC)
CPUクーラー CWCH100(水冷)
メモリー SanMax DDR3-1600 CL11 (8GB×4)+(4GB×4)=48GB
マザーボード GIGABYTE GA-X79-UD5(Intel X79 Express)
システムHDD Crucial M4 SSD 256GB ×2(RAID 0)
サウンドカード CRIATIVE Sound Blaster ZxR
ネットワーク オンボード(Intel WG82579V)
OS Windows 10 64bit(Creators Update適用)
ビデオカード&ドライバー MSI nVIDIA GeForce GTX 1080 Ti ARMOR 11G OC(Force Ware 385.41 WHQL)
使用電源 クーラーマスター V1200 Platinum (1200W)

CrystalDiskMark 5.2.2ベンチ結果

Intel X79 ExpressチップセットではM.2 SSDはサポートされていませんのでアダプターを使用することでデータ用のSSDとして使用できますが、システム起動用ディスクとして使用することはできませんので古いマザーを使用している場合のM.2 SSDの購入には注意が必要です。
ベンチマークの結果は公表されているシーケンシャル:読み出し3,500MB/s 書き込み2,100MB/sより低い結果となりました。

3.ベンチマーク結果

測定環境
CPU Ryzen Threadripper 1950X (OC 4.0GHz)
CPUクーラー ELC-LTTR360-TBP (水冷)
メモリー CORSAIR CMK16GX4M2B3200C16 (8GB X 2) X 2 = 32GB
XMP2.00プロファイル DDR4-3200
マザーボード ASRock X399 Taichi ( BIOS P2.00 )
システムHDD Crucial M4 SSD 256GB
サウンドカード CRIATIVE Sound Blaster ZxR
ネットワーク オンボード(Intel I211AT)
OS Windows 10 Pro 64bit( バージョン 1709 )
ビデオカード&ドライバー MSI nVIDIA GeForce GTX 1080 Ti ARMOR 11G OC(Force Ware 388.71 WHQL)
ケース Cooler Master HAF X (フルタワー)
使用電源 クーラーマスター V1200 Platinum (1200W)

デバイスマネージャー
「Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプター」を使用した場合、デバイスマネージャーでは「NVMe Samsung SSD 960 SCSI Disk Device」と認識しています。「ASRock X399 Taichi」のM.2ソケットを使用した場合は、「Samsung SSD 960 Pro 512GB」と認識しています。

「ASRock X399 Taichi」搭載の M.2 ソケット と 「ASRock X399 Taichi + Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ」のベンチ比較です。
CrystalDiskMark 6.0.0ベンチ結果
ASRock X399 Taichi M.2 ソケット ASRock X399 Taichi +
Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ
CrystalDiskMarkは実行の度に結果が異なるので数回実行した結果でよかった結果を掲載しています。
「ASRock X399 Taichi M.2 ソケット」を使用した場合と「ASRock X399 Taichi + Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ」でほぼ同じ結果と言えます。

CrystalDiskMark ベンチ動作中の CrystalDiskInfo 7.5.1 の温度比較です。
CrystalDiskMark ベンチ動作中の CrystalDiskInfo 7.5.1 の温度情報
ASRock X399 Taichi M.2 ソケット ASRock X399 Taichi +
Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ
   
「ASRock X399 Taichi M.2 ソケット」 アイドル時の温度 「ASRock X399 Taichi M.2 ソケット」 フォーマット中の温度
「Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ」の冷却能力が光ります。「Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ」だとアイドル時及びベンチ動作中ともに温度変化はありませんでした。
「ASRock X399 Taichi M.2 ソケット」ではアイドル時でも「Aquacomputer kryoM.2 evo PCIe 3.0 x4 アダプタ」よりも高い温度になっています。フォーマットを実行すると「ASRock X399 Taichi M.2 ソケット」では60℃を超えてしまいます。
「Samsung SSD 960 PRO 512GB」の温度が高いとサーマルスロットリングが頻発して性能が低下してしまいす。

4.システム起動用ディスクとしてRAID構築

IntelのX299チップセットはIntel以外のサードパーティー製のNVMeでのRAIDは不可となっています。X399チップセットではSamsungなどサードパーティー製のNVMeでもRAIDの構築が可能です。また、システム起動用ディスクのRAID構築も可能になっていますのでシステム起動用ディスクのRAID構築の手順を説明したいと思います。
使用しているマザーボードは「ASRock X399 Taichi 」ですのでUEFI(BIOS)画面は他社製品と若干異なるかと思いますのでご了承ください。

今回は「ASRock X399 Taichi」マザーのM.2 ソケットに「Samsung SSD 960 PRO 512GB」を2枚取り付けてRAID0を構築します。
ASRock X399 Taichi M.2 ソケット に
Samsung SSD 960 PRO 512GB 2枚取付け

1)事前準備
以下の事前準備が必要になります。
項目 内容
① X399チップセット搭載マザーボードの準備 当然ながらX399チップセット搭載のマザーボードは必須です。
今回使用したのは「ASRock X399 Taichi」マザーボードです。
② マザーボードのBIOSを最新バージョンにアップデート Ryzen ThreadripperのNVMe RAID対応を発表した2017年10月2日以降にNVMe RAID対応したBIOSにアップデートします。
ASRock X399 Taichi は バージョン1.70以降のBIOSにアップデートします。
③ バージョン1703以降のWindows 10 64bit版を準備 Windows 10 32bit版及び バージョン1703以前の 64bit版ではNVMe RAIDには対応していません。
Microsoftの下記URLから最新バージョンのWindows 10 をダウンロードすることが可能なので、バージョン1703以前のWindows 10 64bit版を持っていればプロダクトキーはそのまま使用することが可能です。
https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10
④ NVMe RAID ドライバーの入手 Windows 10 インストール時にNVMe RAID ドライバーが必要になりますのでAMDのサイトもしくはマザーボードメーカーサイトからドライバーを入手します。
AMDのサイトでは下記URLからNVMe RAID ドライバーの入手が可能です。
http://support.amd.com/en-us/kb-articles/Pages/NVMe-RAID-Support-for-the-AMD-Ryzen-Threadripper-platform.aspx
今回は「ASRock X399 Taichi」のサポートサイトから「AMD RAID ドライバー」を入手しました。
⑤ 不要なディスクデバイスは取り外す Windows 10 インストールに必要最低限のデバイスのみケーブルを接続し、他のデバイスはマザーからケーブルを外しておきます。

2)UEFI(BIOS)でのRAID設定

電源投入後、「Delete」キーを押してUEFI(BIOS)画面に入り詳細なRAID設定のための事前の設定を行います。
設定画面 設定内容
「アドバンスト」-「ストレージ設定」の画面で「Samsung SSD 960 PRO 512GB」が2枚とも認識されていることを確認します。
認識されていない場合はM.2ソケットへの取り付けが不十分である可能性がありますので、一度、「Samsung SSD 960 PRO 512GB」をソケットから取り外し、再度、取り付け直します。それでも認識されない場合は「Samsung SSD 960 PRO 512GB」が不良品である場合があります。
「アドバンスト」-「ストレージ設定」-「SATA Mode」はデフォルト「AHCI Mode」になっていますので「RAID Mode」に変更します。
「アドバンスト」-「AMD PBS」-「NVMe RAID Mode」はデフォルト「Disabled」になっていますので「Enabled」に変更します。
「起動」-「CMS(互換性サポートモジュール)」-「CMS」はデフォルト「有効」になっていますので「無効」に変更します。
ここまでの設定内容を保存しUEFI(BIOS)を再起動します。再起動したら「Delete」キーを押してUEFI(BIOS)画面に入り直します。
「アドバンス」画面に「RAIDXpert2 Configuration Utility」の項目が追加されています。

再起動後にUEFI(BIOS)画面に入り直したら詳細なRAID設定を行います。
設定画面 設定内容
「アドバンス」-「RAIDXpert2 Configuration Utility」画面を開くと「Controller Management」「Array Management」「Pysical Disk Management」の3項目が表示されます。
「アドバンス」-「RAIDXpert2 Configuration Utility」-「Controller Management」の画面を開き、「Rescan Disks」を実行し、「RAIDXpert2 Configuration Utility」上で認識されているDiskを確認します。

「アドバンス」-「RAIDXpert2 Configuration Utility」-「Controller Management」-「Rescan Disks」画面に接続されているディスクデバイスが表示されます。
今回の例では「PIONEER BD-RW BDR-206D (Blu-rayドライブ)」と「Samsung SSD 960 PRO 512GB」のみ取り付けられていることが分かるかと思います。
左の画面のように「Array」の項目に表示がある場合には、不要なArrayは「Array Management」の中にある「Delete Array」で削除するといいです。今回のケースでは何回も「Create Array」を実行していたので不要なArrayが残っていましたので削除します。

 

「アドバンス」-「RAIDXpert2 Configuration Utility」-「Pysical Disk Management」画面の「Initialize Disk」を開きRAID構築するSSDの初期化を実行します。
「アドバンス」-「RAIDXpert2 Configuration Utility」-「Pysical Disk Management」-「Initialize Disk」を開くと今回のケースでは「Pysical Disk 1:1:0.NVMe.512.0 GB」と「Pysical Disk 3:1:0.NVMe.512.0 GB」の「Samsung SSD 960 PRO 512GB」が表示されています。デフォルト設定では「無効」になっていますので「有効」します。
「Samsung SSD 960 PRO 512GB」の初期化が終了したら「アドバンス」-「RAIDXpert2 Configuration Utility」-「Array Management」で「Create Array」を実行します。
「Create Array」を実行すると左の画面が表示されます。
「Select RAID Level」の項目は「RAID 0」を選択します。次に「Select Physical Disks」でRAID構築する「Physical Disk」を選択します。
「Select Physical Disks」画面で、「Select Media Type」は「SSD」に設定します。表示されている「Physical Disk」はすべて「有効」を選択します。「Check All」をクリックするとすべての「Physical Disk」が「有効」に設定されます。
「Apply Changes」で変更内容を確定します。
元の画面にもどると「Array Size」が表示されます。キャシュサイズの変更が可能ですがデフォルトのままでRAID構築します。「Create Array」を実行するとRAID構築が完了します。
ここまでの設定内容を保存することを忘れないようにしましょう。設定内容を保存し、再起動を実行しUEFI(BIOS)に入り内容を確認します。
ここまでの手順はデータ用RAID構築、システム起動用RAID構築ともに同じ手順です。

3)Windows インストール手順

Windows インストール画面 設定内容
Windows のインストール場所の選択画面ではUEFI(BIOS)でRAID設定されると左の画面のようにパーティションや割り当てられていない領域が表示されています。AMD RAID ドライバーを読み込むために「ドライバーの読み込み」を実行します。
この画面での削除作業は実行しないよう注意してください。削除してしまうとRAID情報が削除されてしまうためインストールができなくなります。もし、削除してしまった場合は、UEFI(BIOS)画面でRAID設定をやり直します。
インストールするドライバーの選択画面で「参照」ボタンをクリックしてドライバーを保存してある場所を選択します。
AMD RAID ドライバーはUSBメモリーに解凍してあるので「USBドライブ(C)」-「AMD_RAID(v9.00.00.088)」-「RS2x64」フォルダを選択し、「OK」ボタンをクリックします。
ドライバーが3種類表示されますが一番上の行を選択し、「次へ」ボタンをクリックします。
Windows のインストール場所の選択画面には何も表示されなくなります。再度、「ドライバーの読み込み」を実行します。
ドライバーが一行増えていますので最下行のドライバーを選択し、「次へ」ボタンをクリックします。
Windows のインストール場所が1行表示されますので行を選択し、「次へ」ボタンをクリックします。
Windows のインストールが開始されます。

CrystalDiskMark 6.0.0ベンチ結果
データドライブ用としてRAID構築 システムドライブ用としてRAID構築
データドライブ用にRAID構築した場合は、単独でのベンチ結果の約倍の性能を発揮します。ただし、システムドライブ用とした場合はシーケンシャル:読み出し、書き込みの低下は否めません。

5.総合評価


1)NVMe のベンダーを問わないでRAID設定が可能
Intel のチップセットではWindows起動ドライブを NVMe SSD でRAID設定を行う場合、Intel製のNVMeのみに限定されています。AMDのX399チップセットでは NVMe SSD のベンダーはどこでも問題ないようです。




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