2008/10/19公開
125W版のPhenom X4 9950 Black Edition (2.6GHz)です
AMDのCPUは、「AthlonXP2500+」から5年ぶりの購入です。「Phenom X4 9950 Black Edition」は、我が家として初めてのクアッドコアCPUで、AMDのクアッドコアの中では現時点で最上位モデルになります。しかし、Intelの「Core 2 Quad Q9650」(3.0GHz)や最上位モデルの「Core 2 Extreme QX9770」(3.2GHz)といづれの製品も動作クロックは3.0GHzを超えています。そのため、Phenomの最上位モデルで倍率可変と言っても動作クロックが2.6GHzだと見劣りするのは否めません。今回、低価格でBlu-rayを見ることができる環境構築で、自分の使用しているメインマシンの入換えではないので動作クロックは特に重視しませんでした。「Athlon X2」でも性能的には十分とは思いましたが、久々のAMDのCPU購入なのでちょっと奮発して「Phenom X4 9950 Black Edition」のTDP125W版を購入しました。基本的には、定格での使用しか考えていませんがオーバークロック耐性も簡単に調べてみましたので参考にしていただければと思います。
AMD Phenom X4 9950 Black Edition (2.6GHz:Agenaコア)の特徴
・Socket AM2+ (940ピン) パッケージ を採用、2000MHzシステム・バス、L1キャッシュ 128KB×4、L2 キャッシュ 512KB×4、L3 キャッシュ 2MB を共有、65nmSOIプロセス技術、クアッドコア
・HyperTransport3.0(I/O バンド幅 最高16.0GB/sをサポート)、Cool‘n’Quietテクノロジ、AMD Virtualization、CoolCoreテクノロジ
・統合DDR2メモリ・コントローラ、Enhanced 3DNow !、3DNow !、SSE2、SSE3をサポート
AMD Phenom X4 9950 Black Edition |
125W版 Phenom X4 9950 Black Edition CPU本体 |
ヒートパイプ式のリテールヒートシンク |
リテールクーラーもヒートパイプ仕様で豪華になっていてヒートシンク中央部分のコア接触部分は銅製になっています。
Phenom X4 9950 Black Edition ( Agena、65nm、2.6GHz、Quad-Core ) | |
※メモリーモジュール「SanMax DDR2-800 CL5 hynix」のメモリー電圧を標準1.8Vから2.1Vに上げてDDR2-1066設定にしてテストを行いました。
VIDをCoreTemp0.99.3で確認してみましたが、「1.3000V」でした。
測定環境 | ||
CPU | AMD Phenom X4 9950 Black Edition (2.6GHz) | intel Xeon E3110 (3.0GHz) |
CPUファン | リテール | |
メモリー | SanMax DDR2-800 CL5 hynix 1GB×2=2GB | |
マザーボード | GIGABYTE GA-MA790GP-DS4H (AMD 790GX +SB750) BIOS F2a |
Asus P5W DH Deluxe(i975X + ICH7R) BIOS 2704beta |
HDD | HITACHI Deskstar7K80(80GB) | |
サウンドカード | オンボード(Realtek Semiconductor ALC889A) | オンボード(Realtek Semiconductor ALC882M) |
ネットワーク | オンボード(Realtek 8111C) | オンボード(Marvell 88E8053) |
OS | Windows XP Professional SP3 DirectX9.0c | Windows XP Professional SP2 DirectX9.0c |
ビデオカード&ドライバー | ATI Radeon HD 2900XT (CATALYST 8.10)デフォルトクロック | ATI Radeon HD 2900XT (CATALYST 8.4)デフォルトクロック |
※「GIGABYTE GA-MA790GP-DS4H」のCPUサポートリストではTDP125Wの「Phenom X4 9950 Black Edition」はBIOSバージョンが「F2A」でサポートとなっていますが私の購入したマザーはバージョンが「F1」でしたが問題無く起動することができました。
クロックアップ
AMD790GXチップセット搭載マザーではPhenomプロセッサをオーバークロックする「Advanced Clock Calibration」(以降「ACC」)という機能があります。AMDは「CPUのオーバークロック耐性が向上する」との説明しか行っていませんが、他の情報では「ノースブリッジとサウスブリッジをそれぞれCPUと同期させることで,『AMD OverDrive』を利用したオーバークロック設定時に,サウスブリッジが高い動作クロックへ追従できるようになる」ようですが、詳細は不明です。
AMD790GXチップセット搭載マザーではPhenomプロセッサをオーバークロックするユーティリティ「Over Drive」を使用することができリアルタイムに制御することができます。このユーティリティを使用してクロックアップ耐性と各種のベンチテストを行ってみました。
また、BIOS画面上で「ACC」を「AUTO」にするとクロックアップ耐性が上昇するという情報もあるので、いろいろ試してみました。
「AMD Phenom X4 9950 Black Edition」のデフォルト電圧は「OverDrive」を見ると「1.30V」になっていました。また、CoreTemp0.99.3でも「1.3000V」となっていました。
※オーバークロックによるCPU、マザーなど他のパーツが破損した場合は、保証対象外ですので自己責任で実施してください。
AMD Over Drive Ver 2.1.4 ユーティリティ で 3.3GHzにクロックアップしたときのシステム情報です |
今回、OverDriveの安定性テストを通過したクロックは上記の画像の通り、コア電圧1.45Vでクロック3.30GHzでした。ヒートシンクには「OROCHI」を使用しています。
自動クロックは初心者向けですが、動作の安定したクロックを設定するには最適です。
Over Drive におまかせの自動クロックアップ コア電圧1.3Vでリテールクーラーだと3.0GHzにクロックアップ |
「設定」画面で「詳細」に設定すると下記の画面のように乗数、クロック、電圧を細かく変更できるようになります。当然ながらフリーズや破損は覚悟で実行する必要があります。
Over Drive パフォーマンス制御画面でコア電圧、コア乗数、クロックをリアルタイムに変更できます |
クロックアップした状態が安定するかのテストを行うことができます。今回、この1時間の安定性テストを通過したクロックは3.30GHzでした。
Over Drive 安定テスト コア電圧1.45Vまで上げて3.3GHzで安定テストを1時間実行 |
ACCが「Disable」の場合と「AUTO」設定の場合のコア電圧1.3V時のクロックアップの違いをテストしてみました。リテールヒートシンクを使用してのテストです。
コア電圧 | 乗数 | ACC | クロック |
1.3V | x15 | Disable | 3.00GHz |
1.3V | x15.5 | AUTO | 3.10GHZ |
「TMPGEnc 4.0 Xpress」でMPEGファイルへのエンコード完了するクロックで、ACCを「AUTO」にした場合、クロックアップ耐性は少しいいようです。
ベンチマーク結果
1)CPUベンチ
「Advanced Clock Calibration」が「Disable」の場合と「AUTO」に設定した場合の違いもテストしてみました。
Superπ 104万桁 |
SiSoftware Sandra Lite XII.2008.SP2 |
Multi Core の 4x8kb の数値がどうしてもおかしな数値を示してしまいます。それとも、こんな数値なのかはちょっとわかりませんでした。
3DMark06 Build110 |
2)メモリーベンチ
SiSoftware Sandra Lite XII.2008.SP2 |
※「Cache & Memory」はクロックによって値に違いが出ていますが、メモリーバンドはメモリークロック自体に違いがないので、どのクロックでも同じ値になっています。
3)3Dベンチ
3DMark06 Build110 |
LostPlanet |
4)エンコード
ビデオエンコードソフト
TMPGEnc 4.0 Xpress |
ビデオソースデータ と 出力ビデオデータの設定
ビデオソースデータ |
|
・MTV2000録画データ (1分、62.7MB) ・Video size 720 x 480 ・Video bitrate 8000kbps(CBR) ・Audio format MPEG-1 Layer-2 ・Audio frequency 48kHz ・Audio bitrate 224kbps |
|
出力ビデオデータ(WindowsMediaファイル)のエンコード設定 | |
映像 | ・Video size 720 x 480 ・Video bitrate 2394kbps(2パスCBR) ・Video codec Windows Media Video 9 ・Video framrate 29.97fps |
音声 | ・Audio codec Windows Media Audio 9.2 ・Audio format 192kbps、48kHz、Stereo(2パスCBR) |
出力ビデオデータ(MPEGファイル)のエンコード設定 | |
映像 | ・Video size 720 x 480 ・Video bitrate 4000kbps(2パスVBR) ・Video codec MPEG-2 ・Video framrate 29.97fps |
音声 | ・Audio codec MPEG-1 Audio Layer K ・Audio format 192kbps、48kHz |
Over Drive を使用して4コアの内、2コアのクロックを下げた状態でのテストも行いました。クロックの箇所で「すべてのコアを選択」のチェックを外すとコア毎に乗数を変更することができます。
Over Drive で 2.6GHz x 2 コア、1.0GHz x 2 コア に設定しました |
※ACCは「Disable」に設定しています。
TMPGEnc 4.0 Xpress CPU設定 SSE3使用 |
TMPGEnc 4.0 Xpress CPU設定 Enhanced 3D Now!使用 |
TMPGEnc 4.0 XPress による エンコード処理時間
TMPGEnc 4.0 XPress | ||||||
WindowsMediaファイル | MPEGファイル | |||||
SSE3 | SSE4 | Enhanced 3DNow ! |
SSE3 | SSE4 | Enhanced 3DNow ! |
|
Phenom X4 9950 BE ( 2.6GHz ) (ACC:Disable) | 1分35秒 | - | 2分06秒 | 32秒 | - | 1分34秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 2.6GHz ) (ACC:AUTO) | 1分35秒 | - | 2分06秒 | 33秒 | - | 1分34秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 2.6GHz ) (ACC:Disable) 2.6GHz (コア0、1)、1.0GHz (コア2、3) に設定 |
3分20秒 | - | 4分06秒 | 48秒 | - | 2分00秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 2.6GHz ) (ACC:Disable) 1.0GHz (コア0、1)、2.6GHz (コア2、3) に設定 |
3分26秒 | - | 4分12秒 | 47秒 | - | 2分52秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 3.0GHz ) (ACC:Disable) | 1分25秒 | - | 1分52秒 | 30秒 | - | 1分22秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 3.0GHz ) (ACC:AUTO) | 1分27秒 | - | 1分26秒 | 28秒 | - | 1分23秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 3.0GHz ) (ACC:Disable) 3.0GHz (コア0、1)、1.0GHz (コア2、3) に設定 |
3分18秒 | - | 4分08秒 | 48秒 | - | 1分50秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 3.0GHz ) (ACC:Disable) 1.0GHz (コア0、1)、3.0GHz (コア2、3) に設定 |
3分22秒 | - | 4分06秒 | 45秒 | - | 2分43秒 |
Phenom X4 9950 BE ( 3.3GHz ) (ACC:AUTO) | 1分17秒 | - | 1分45秒 | 26秒 | - | 1分15秒 |
Xeon E3110 ( 3.0GHz ) | 2分47秒 | 2分48秒 | - | 47秒 | 49秒 | - |
※ACCの使用有無による結果にはちょっとバラツキがあるようです。
CPU使用率の比較
4コアのクロックを変えた場合のCPU使用率をテストした時のOverDriveのステータスモニタです。全て「Enhanced 3D Now!」設定での使用率です。
WindowsMediaファイルへエンコード時のCPU使用率 | MPEGファイルへエンコード時のCPU使用率 | |
・WindowsMediaファイルへエンコード時のCPU使用率は全コア同じクロックの場合、各コアのCPU使用率の傾向は同じになっています。2コアづつクロック数を変えた場合のエンコードは、クロック数が低いコアは解析からエンコードまで使用率の傾向は同じですが、クロックの高いコアは解析時のCPU使用率が低く、エンコード時にCPU使用率が上がっています。
・MPEGファイルへエンコード時のCPU使用率は全コア同じでも、各コアのクロックを変えてもCPU使用率は同じ傾向になっています。
TMPGEnc 4.0 XPressによる エンコード時のCPU温度
無負荷時 | エンコード中最高温度 | |
Phenom X4 9950 BE ( 2.6GHz ) | 34.5℃ | 50.5℃ |
Xeon E3110 ( 3.0GHz ) | 42℃ | 53℃ |
室内温度20℃
(Xeon E3110の温度は前回レビュー時に温度を掲載しています。)
総評
1.「Advanced Clock Calibration」 の効果は?
「Advanced Clock Calibration」の機能を使用することでクロックアップ耐性が向上することはテストの結果で判明しました。クロックアップ以外に同一クロックでのACC使用有無では、SiSoftware Sandra Liteの「Processor Arithmetic」ベンチマークでACCを「AUTO」した場合、スコアが向上しましたが、それ以外でACCの効果を見つけ出すことはできませんでした。
「Phenom X4 9950 Black Edition」単体のベンチマークですのでクロックアップ耐性以外のACCの有効性は今回使用した「GIGABYTE GA-MA790GP-DS4H」マザーでトータル的にテストしてみたいと思います。
2.クアッドコアの性能は強烈
ベンチデータを見ると、「Superπ 104万桁」とSiSoftware Sandra Liteの「Processor Multi Media」以外は「Phenom X4 9950 Black Edition」が2.6GHzにもかかわらず、3.0GHzの「Xeon E3110」よりも圧倒的なスコアを叩き出しています。特に「LOST PLANET」は圧倒的なスコアを叩き出していて、「Xeon E3110」の1.5倍以上の性能を発揮しています。
3.定格動作でも十二分の性能で、初心者からエキスパートまで楽しめるCPU
「Phenom X4 9950 Black Edition」は定格動作の2.6GHzでもクアッドコアの性能を十分に発揮していて、「Xeon E3110」の3.0GHz動作以上の性能を発揮しています。今回は、サブマシンの入れ換えですが、我が家では最強のサブマシンになります。
リテールヒートシンク付属のファンは非常に低騒音なので静音化にも有効かと思います。ライバルであるIntelの「Core 2 Quad Q9400 (2.66GHz)」よりも低価格なので、コストパフォーマンスは高く初心者にも導入し易いCPUだと思います。また、「Over Drive」ユーティリティによりIntelの「Core 2 Quad Q9400 (2.66GHz)」よりも調整範囲が広いのでエキスパートにも向いています。
「Phenom X4 9950 Black Edition」は初心者からエキスパートまで十分楽しめるCPUだと思います。
注)オーバークロックによる製品破損は保証外ですのでオーバークロックは自己責任で行ってください。