2018/01/01公開
2018/09/30更新:ゲームが起動しない場合の対応
2018/10/02更新:コア数の違いによるゲームベンチマー


 16コア/32スレッドのハイエンドCPU
      「Ryzen Threadripper 1950X」 (3.4GHz)


IntelのハイエンドCPU「Sandy Brodge-E」である「Core i7-3930K」を2012年1月に購入。今年の4月には「Ivy Bridge-E」の「Core i7-4930K」へ交換しました。LGA2011 パッケージ&Intel X79 Express チップセット搭載マザーのPC環境も約6年間使用してきてちょっと古くなってきていました。そこに、AMDが今年(2017年8月)に16コア/32スレッド「Ryzen Threadripper 1950X」を発表したのをきっかけに新しいPC環境への変更を検討し、「Ryzen Threadripper 1950X」の新たなPC環境に移行することを決めました。
検討当初、同時期に発表のあったIntelのCore i9も検討しましたがX299チップセット搭載マザーではM.2 SSDでのRAID構築はIntel製のM.2のみで3rdパーティー製のM.2でのRAID構築は不可であることが判明しました。ところが、AMDはX399チップセット搭載マザーで3rdパーティー製のM.2でのシステムディスクのRAID構築を可能にすることを発表し、BIOSアップデートで対応可能であることが判明したので「Ryzen Threadripper 1950X」導入の決め手となりました。
「Ryzen Threadripper 1950X」のPC環境構築の参考になればと思います。

1.Ryzen Threadripper 1950X (3.4GHz)の仕様と特徴
・ソケット形状はAMDとして初めてのLGAパッケージのSocket TR4 を採用。
・CPUコア数:16、スレッド数:32、L1キャッシュ 96KBx16、L2 キャッシュ 512KBx16、L3 キャッシュ
8MBx4、最新の14nmプロセス技術
・定格最大クロック 3.4GHz、最大ターボクロック 4.0GHz 、4チャンネル DDR4-2667MHzをサポート、180W TDP、PCI Express 3.0をサポート
・「Zen」コア アーキテクチャー、AMD SenseMIテクノロジー、AMD Ryzen Masterユーティリティ、AMD Ryzen™ VR Ready Premium、AMD 仮想化、AES、AVX2、FMA3

Ryzen Threadripper 1950X 製品ボックス
製品ボックス正面 製品ボックス後方 右斜め 製品ボックス後方からライティング

Ryzen Threadripper 1950X 製品ボックス 開封の儀
紙の帯を外します 「RIP HERE」を摘まんで引く 切れた帯の裏には、作業手順が記載
発泡スチロール製の外装を上下に分離し、樹脂製ブロックを取り出します。
発泡スチロール製の外装の底には、紙製ケースが入っていて、その中にはシール及びCPU取り付けガイドが入っています。
紙ケースを取ると、トルクスドライバーとCPUクーラー取り付け用ブラケットが入っています。 ブラケットには締付け順が刻印されています。
トルクスドライバーのビス穴は直径4mmで規定トルク値は1.5Nmです。
取っ手を逆時計回りに回します。 樹脂製ブロックからCPU台座を外します。 CPU台座の中にCPUが入っています。
クリップを外して黒カバーも外します。 キャリアフレームごと斜めに引き上げる Ryzen Threadripper 1950X です。
キャリアフレームごとマザーに取付けます。 LGAパッケージのSocket TR4はコンタクト(≒ピン)数が 4094 あります。

Core i7 と比較して製品ボックス、CPU本体ともにかなり大きいです。

Socket TR4用ブラケット装着 Socket TR4に「CWCH50-1」を固定 ウォーターヘッドはCPUより小さいです
同梱されていたSocket TR4用CPUクーラー取り付け用ブラケットを使用してCorsair製 CWCH50-1(水冷)を取り付けました。「Ryzen Threadripper 1950X」はCorsair製 CWCH50-1(水冷)のウォーターヘッドより大きいので冷却不足が予想されます。
Corsair製 CWCH100 (水冷)には取り付け不可能でした。

AMD Ryzen Threadripper 1950X ( 14nm、3.4GHz、16コア/32スレッド

AMD Ryzen Threadripper 1950X ( 14nm、3.4GHz、16コア/32スレッド
タスクマネージャーで32スレッドが動作している様子を見ると圧巻です。

2.オーバークロック制御用AMD Ryzen Masterユーティリティ

「AMD Ryzen Master」は下記サイトからダウンロード可能です。
http://www.amd.com/ja/technologies/ryzen-master
オーバークロック制御用AMD Ryzen Masterユーティリティ
AMD Ryzen Masterは、、Ryzen CPUとDDR4メモリーそれぞれのカスタムクロックおよび電圧調整を最大4つのプロファイルとして保存するこが可能です。また、コアをパークしてメモリーのタイミングを調整することも可能です。

AMD Ryzen Masterのカスタマイズ性能とシステム モニタリング
AMD Ryzen Masterは、コアごとの平均/ピーク時のクロックレートおよび温度ヒストグラムをリアルタイムにモニタリングする機能を有しています。

メモリアクセスモードはDistributedモードとLocalモードの2種類のモードがあり、モード切り替えは「AMD Ryzen Master」で行います。
DistributedモードはRyzen TheadripperをシングルソケットのCPUとして扱うモードで,4chのメモリコントローラを並列動作させることで広いメモリ帯域幅を実現する一方、Infinity Fabricを介したメモリアクセスが発生するため、その遅延は大きくなります。
Localモードは、Ryzen Threadripperをデュアルソケットのシステムと同等のCPUとして扱います。アプリケーションを、可能な限りCPUに近い物理メモリ側に近いメモリへ割り当てるようになります。Distributedモードと比べるとメモリアクセス遅延の大幅な低減を図れることになります。

オーバークロック耐性
デフォルト コア電圧設定:1.125V ベースクロック:3.4GHz、ブースト時:3.7GHz コア電圧設定:1.125V ベースクロック:3.8GHz コア電圧設定:1.35V ベースクロック:4.0GHz
コア電圧及びベースクロックは「AMD Ryzen Master」で変更可能です。今回はBIOS画面から変更しました。
上記のベースクロックは「TMPGEnc Video Mastering Works 6」でのエンコード処理が完走した時の設定値になります。Windows起動だけであればコア電圧設定:1.5V、ベースクロック:4.1GHzでWindows起動までは動作しましたが、エンコード処理実行中にフリーズしてしまいました。

TMPGEnc Video Mastering Works 6 エンコード時のコア温度
デフォルトクロック 3.4GHz Maxコア温度 67℃ オーバークロック 4.0GHz Maxコア温度 83℃
室温が10℃とかなり低温でのテストとなりましたが「SiSoftware Sandra Lite Platinum 2017」実行時にベースクロック4.0GHz設定ではコア温度が90℃を超える場面もありました。
Corsair製 CWCH50-1(水冷)では冷却不足と思います。


3.ベンチマーク結果

測定環境
CPU Ryzen Threadripper 1950X (3.4GHz) intel Core i7 4930K (3.4GHz)
CPUファン Corsair製 CWCH50-1(水冷) Corsair製 CWCH100 (水冷)
メモリー CORSAIR CMK16GX4M2B3200C16 (8GB X 2) X 2 = 32GB SanMax DDR3-1600 CL11 (8GB×4)+(4GB×4)=48GB
マザーボード ASRock X399 Taichi ( BIOS P2.00 ) GIGABYTE GA-X79-UD5 (X79 Express) BIOS:F13w
システムHDD Crucial M4 SSD 256GB
サウンドカード CRIATIVE Sound Blaster ZxR
ネットワーク オンボード(Intel I211AT) オンボード(Intel WG82579V)
OS Windows 10 Pro 64bit( バージョン 1709 )
ビデオカード&ドライバー MSI nVIDIA GeForce GTX 1080 Ti ARMOR 11G OC(Force Ware 388.71 WHQL)
使用電源 クーラーマスター V1200 Platinum (1200W)

1)CPUベンチマーク
Superπ mod1.5 1M

SiSoftware Sandra Lite Platinum 2017 (24.50)


グラフィックベンチマーク

CINEBENCH R15

3DMark Time Spy


3DMark Fire Strike

ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター (Score)

Assassin's Creed Origins ベンチマーク (Score)


3)ビデオエンコード処理

ビデオ編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を使用してのエンコード処理性能を測定します。
TMPGEnc Video Mastering Works 6

ビデオソースデータ と 出力ビデオデータの設定
ビデオソースデータ(「HITMAN」 GeForce Experienceによる録画データ )
映像 ・長さ
・映像サイズ
・平均ビットレート
・ストリーム形式
5分13秒、18802フレーム、1.7GB
1920 x 1080
43549kbps
H.264/AVC
音声 ・サンプリング周波数
・平均ビットレート
・ストリーム形式
48kHz
196kbps
MPEG-4、AAC
出力ビデオデータ(MP4ファイル、H.264/AVC)のエンコード設定
映像 ・映像サイズ
・平均ビットレート
・最大ビットレート
・ストリーム形式
・映像エンコーダー
・フレームレート
1920 x 1080
24.85Mbps(1パスVBR)
99.4Mbps
H.264/AVC
x264
60fps
音声 ・サンプリング周波数
・平均ビットレート
・ストリーム形式
48kHz
128kbps
MPEG-4、AAC
出力ビデオデータ(MP4ファイル、H.265/HEVC)のエンコード設定
映像 ・映像サイズ
・平均ビットレート
・最大ビットレート
・ストリーム形式
・映像エンコーダー
・フレームレート
1920 x 1080
24.85Mbps(1パスVBR)
99.4Mbps
H.265/HEVC
x265
60fps
音声 ・サンプリング周波数
・平均ビットレート
・ストリーム形式
48kHz
128kbps
MPEG-4、AAC

TMPGEnc Video Mastering Works 6 による 1秒当たりの処理フレーム数(フィルタリング設定なし)
TMPGEnc Video Mastering Works 6 (1秒当たりの処理フレーム数)

メモリーアクセスモード メモリーアクセスモードとストリーム形式別の論理プロセッサの負荷状態
H.264/AVC H.265/HEVC
Distributedモード
Localモード

  H.265/HEVCストリーム形式でのメモリーアクセスモード別の物理プロセッサの負荷状態 ( Core Temp で負荷データ取得 )
Distributedモード Localモード
H.265/HEVC
H.265/HEVCストリーム形式ではメモリーアクセスモードがDistributedモードとLocalモードでは物理プロセッサの負荷状態が異なっています。
Distributedモードでは物理プロセッサ全てが同じ負荷状態になっています。ただし、Localモードの場合、物理プロセッサの半数は負荷が高く、残りの物理プロセッサは負荷が低い状態になりました。このことによってDistributedモードとLocalモードではエンコード処理時間が異なっています。


4.総評

1.16コア/32スレッドは圧巻

「Core i7-4930K」は6コア/12スレッドだったのでタスクマネージャで見る16コア/32スレッドが動作している様子は圧巻です。ただし、16コア全てをフルに使用しているアプリは今回使用した中では「TMPGEnc Video Mastering Works 6」「CINEBENCH R15」「3DMark Time Spy」「3DMark Fire Strike」でした。ゲームソフトの「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」「Assassin's Creed Origins」「HITMAN」では16コア全てをフルに動作していませんでした。CPU負荷が50%以上になるのは物理コアの8コア以下で残りの物理コアは20%以下の低い負荷になっていて16コア全てをフルに使用している状態ではありませんでした。ゲームソフトは「Ryzen Threadripper」への最適化が行われていないのか、もしくは、そもそもCPUのメニーコア化への最適化が行われていないのではと思われます。
CPUのメニーコア化が進んでいる状況でアプリケーション側もCPUのメニーコア化への最適化が必要かと思います。

2.使い方が難しいメモリーアクセスモード
「Ryzen Threadripper」の特徴として2種類のメモリーアクセスモードが用意されています。ただし、一般ユーザーはどのアプリケーションで、どのモードを選択すればいいのか判断は難しいかと思います。メモリーアクセスモードはマニアック過ぎて一般ユーザー(私を含め)にはハードルが高いように思います。
ベンチ結果を見る限りではメモリーアクセスモードがDistributedモード設定でも処理能力は十分かと思います。

3.「TMPGEnc Video Mastering Works 6」は「H.265/HEVC」の最適化が必要
「TMPGEnc Video Mastering Works 6」ではストリーム形式を「H.265/HEVC」に設定した場合のエンコード処理ではも32スレッド全てがフルに動作していませんでした。Distributedモードでは物理コアの16コアが50%以上のCPU負荷で動作していて、論理プロセッサの半数はフルに動作していませんでした。Localモードでは物理コアの8コアがフルに動作していて、論理プロセッサとしては16スレッドがフルにに動作し、残りの論理プロセッサはまだ余裕のある状態でした。「H.265/HEVC」設定でのエンコード処理時間の差はフルに動作する物理コア数の違いと、論理プロセッサの動作の違いによるものと推察します。
「H.265/HEVC」設定でも「H.264/AVC」と同様に論理プロセッサ32スレッド全てがフルに動作するよう「Ryzen Threadripper」への最適化が進むことを望みます。

4.オーバークロックは4.1GHzが壁、冷却能力の高いクーラーが必要
水冷クーラーはCorsair製 CWCH50-1(水冷)使用したためCPU冷却能力に不足があったと思います。4.1GHzへのオーバークロックではコア電圧を1.5Vまで上げる必要がありましたが、動作したのはWindows起動までで「TMPGEnc Video Mastering Works 6」でのエンコード処理は完走しませんでした。真夏時の安定動作にはさらに冷却能力の優れたクーラーが必要と思います。冷却能力の高い「ENERMAX ELC-LTTR360-TBP」購入済なのでテストが終了次第、テスト結果を報告したいと思います。


「Ryzen Threadripper 1950X」の16コア/32スレッドは圧倒的な処理能力を発揮しますが、メニーコアや「Ryzen Threadripper」への最適化が進んでいないためか各アプリケーションは「Ryzen Threadripper 1950X」の処理能力を十分に引き出していないと思います。今後、「Ryzen Threadripper 1950X」の処理能力を十分に引き出すよう各ゲームソフト等が「Ryzen Threadripper」やメニーコアへの最適化が進むことを期待したいです。


※ ゲームが起動しない場合の対応(2018/09/30追記)
「Ryzen Threadripper 1950X」に変更してから「Tom Clancy's Splinter Cell Blacklist」と「DiRT Rally」について16コアのままではゲームが起動しませんでした。いろいろ調べたところコア数制限がありゲームが起動しないことが判明しました。
そこで「AMD Ryzen Master」で「無効なコア数」を変更し確認したところ「Tom Clancy's Splinter Cell Blacklist」「DiRT Rally」共に4コア無効にし、12コア有効でゲームが起動することを確認しました。


※ コア数の違いによるゲームベンチマーク(2018/10/02追記)
コア数の違いによるゲームパフォーマンスの影響を調べてみました。
グラフィックオプションは解像度:3840 X 2160、画質は最高品質の設定でベンチマークを取得しました。
有効コア数の変更は「AMD Ryzen Master」で実施しています。 ベンチマークは「HITMAN」「F1 2018」共にベンチマークモードで取得しています。
ベンチ結果を見ると有効コア数が12コアが一番良い結果となりました。「MSI Afterburner」でベンチ実行中にCPUコアクロックを見ていましたが、12コアの場合、3.7GHzを上回る場面が他のコア数より多かったように思います。
この結果からゲームプレイを行う上でコア数よりもCPUクロックが大きい方が有利であると言えるかと思います。ただし、エンコードではコア数の多いほうが圧倒的に有利です。
因みに「F1 2018」はVer1.09からVer1.10へアップデートされています。「F1 2018」ではバージョンの違いによるベンチマークも取得しています。Ver1.10ではコア数に影響は受けないように思います。
  16コア 12コア 8コア
 
HITMAN (DirectX12) 平均FPS:91 平均FPS:96 平均FPS:95
F1 2018 (Ver:1.10) (DirectX11) 平均FPS:104 平均FPS:104 平均FPS:104
F1 2018 (Ver:1.09) (DirectX11) 平均FPS:69 平均FPS:72 平均FPS:68
※グラフィックカード:MSI nVIDIA GeForce GTX 1080 Ti ARMOR 11G OC(Force Ware 411.70 WHQL)


注)オーバークロックによる製品破損は保証外ですのでオーバークロックは自己責任で行ってください。



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