2002/03/11公開


Cの静音化!


現在の、パソコンの性能は格段に向上しワープロ、インターネットなど一般的な使用には十分過ぎるくらいの性能に達しているのではないかと思います。しかし、一方ではパソコンの性能はエスカレートし、CPUのクロック数はどんどん上がり、CPUからの発熱量は増え、リテール品のCPUヒートシンクでも冷却性能を上げるためとてつもなく巨大なものが付属していてCPUファンも高回転タイプになっています。また、パソコンの高性能化に伴いグラフィックカードのチップやマザーボードのチップセットからの発熱量も増えそれを冷却するためにチップファンを装着することも多くなっています。このようにパソコンが高性能になるにしたがって騒音の発生源も多くなってきています。多くのパソコンユーザーは、静かな環境でパソコンを楽しみたいのではないでしょうか。そこで、今回はそこそこの性能を確保したままパソコンの静音化に取り組んでみたいと思います。


静音化の条件
1.CPUは、intelのPentiumV1GHz(または同クラスのCPU)を定格で使用します。
2.3Dゲーム用マシンではないのでグラフィック性能は重要視しないこととします。



第一ステップ(騒音の発生箇所はどこ?)
さて、騒音の発生源となる箇所はどこか見てみましょう。

1.CPUファン
2.電源本体及び電源ファン
3.ハードディスク
4.DVD/CD-ROMドライブ
5.グラフィックカードのチップファン
6.マザーボードのチップファン
7.ケースファン
8.ケース本体

騒音の発生源の多くはファンが回転しているパーツでファンのモーター音、振動、ファンの風きり音が騒音の発生源となります。また、電源は本体内部のトランス部分が振動していますのでこれも騒音の発生源になります。
ハードディスクはディスクの回転音やディスクをアクセスする時のアームが移動するときの音が騒音の発生源となります。ケース本体も強度が無いと各パーツの振動がケースに伝わって騒音の発生源となります。

※参考までに一般的に言われている「音圧レベルと身近な音との比較」です。
音圧レベル 身近にある騒音 うるささについての程度
0dB 最小可聴限度 静か
20dB 木葉のふれあう音、ささやき声
30dB 新聞をめくる音
40dB 図書館、静かな公園 日常生活で望ましい範囲
50dB 静かな事務所
60dB 普通の会話、デパートの中 うるさい
70dB 騒々しい事務所、電話のベル
80dB 電車の車内 きわめてうるさい
90dB 騒々しい工場、大声による独唱
100dB 電車が通るときのガード下 聴力機能障害



第二ステップ(騒音を防止する方法は?)
究極的には、騒音の発生源を完全に排除すれば騒音はなくなります。しかし、市販のパーツを使用する限り騒音をゼロにすることは不可能ですが、市販されている静音グッズなどを使用して騒音の発生を極力抑えることは可能です。さて、どのような静音化の方法があるか見てみましょう。

1.CPUファン
ファンレスヒートシンクに交換 CPUファンは意外と五月蝿いパーツで、PentiumV1GHzのリテールファンは回転数3,900rpmで音圧レベルは31dBと「静か」の中には入りません。また、市販の高性能CPUファンは35dB〜40dBと更に高くなります。静粛性の高い(30dB以下)CPUファン&ヒートシンクに交換するのが一般的かと思います。しかし今回は、「PCパーツレビュー」に掲載したファンレスヒートシンクを使用し、騒音の発生を完全に防止します。これであれば、CPUファン故障で停止しても熱暴走を心配する必要はありません。

 

2.電源本体及び電源ファン
静音ファンに交換 既設電源ファンの取り外し 電源ファンも物によってはCPUファンより五月蝿いものがあるぐらいの騒音発生源です。静粛性の高い電源に交換するのが一番ベストかと思いますが、既存の電源を使用する場合、ファンを静粛性の高いものに交換します。
今回使用した電源のファンは基盤から直接電源が供給されていたので、線をニッパで切断し、線の先端にはショートしないようにビニルテープを巻きます。交換したファンの電源はマザーボード側から供給できるように電源コネクタを電源本体の外に出しました。
電源をファンレスにしてしまう手もありますが、電源本体やケース内の熱を逃がすことができなくなるのと、電源本体を壊す危険性があるのでお奨めはできません。
今回使用したファンは80mmの山洋製のサーミスタ内臓のケースファンです。回転数は温度によって1,450rpm〜3,000rpmまで可変し、音圧レベルは14〜29dBとなっています。使用した感じでは回転数が1,475〜1,650rpmと低速なのでかなり静かになりました。
防振グッズ(防振シート、ワッシャー) 防振シートを両面テープでずれ止め その他に電源本体と電源ファンの防振用に防振シートを使用します。防振シートは柔らかいので両面テープで貼り付けると電源取り付け時に防振シートがずれるのを防ぎます。
防振ワッシャーで固定 電源本体に制震シート貼付 電源をケースに固定する際、防振ワッシャーを使用して極力ケース本体に振動を伝えないようにします。
電源本体|防振シート|ケース|防振ワッシャー|ビス|といった具合にサンドイッチにして固定し、より防振効果を上げます。更に、電源本体にはダイポルギー制震シートを貼り付けて振動を抑えます。しかし、防振シートや制震シートの効果は思ったほど無いように思います。
やはり電源ファンの交換が静音化には効果的です。もしくは、静音設計の電源に交換するのも効果的だと思います。

 

3.ハードディスク
静粛性の高いBarracua ATA W ハードディスク消音ケースSmart Drive ハードディスクも意外と五月蝿いものですが、今回は音圧レベルが20dB(アイドル時)と圧倒的に静粛性の高いBarracuda ATA Wに交換します。(Deskstar120GXPは30dB)
しかし、電源ファンを静かなものに交換すると静粛性の高いBarrcudaATA Wでもアクセス音が気になります。そこで静粛性を高めるためにハードディスク消音ケースのSmart Driveを使用します。DTLA(アイドル時、30dB)のようなカラカラとアクセス音のするハードディスクでもSmart Driveに入れると耳をケースに近づけないとアクセス音が聞こえないぐらい静かになります。
このハードディスク消音ケースは熱が篭らない設計となっていますが、Cheetahなどの超高速回転のハードディスクでは発熱量が多過ぎるため消音ケースでは熱を逃がしきれないので、かえって熱が篭ってしまいますので注意が必要です。

 

4.DVD/CD-ROMドライブ
静音モード切替ユーティリティ
最近のDVD/CD-ROMドライブも48、52倍速と高速になったことにより動作時のモータ回転音は意外と五月蝿いものです。DVD/CD-ROMドライブメーカーによっては静音モードに切り替えるツールを用意していますのでそれを利用するといいと思います。PioneerのDVD-A60Sで静音モードにするユーティリティーが提供されています。ただし、読み込みの倍速が落ちるのと、β版であるということを承知の上で使用する必要があります。

 

5.グラフィックカードのチップファン
ファンレス・グラフィックカード 最近では、グラフィックカードも高性能になりチップにファンを装着したカードが多くなりました。しかし、3Dのグラフィック性能を追求しないのであれはチップの発熱が少なくファンレスヒートシンクを使用しているMatrox社製のG450やG550、ATI社のRADEON7000、nVIDIAのGeForce2MXチップを使用したグラフィックカードを使用するか、グラフィック機能内蔵のマザーボードを使用するのが静音化には良い方法だと思います。
最近では、GeForce4MX440チップを使用したグラフィックカードでファンレスヒートシンクを使用した製品が出ているので、どうしてもそこそこの3D性能が必要で静粛性も保ちたいという方には最適だと思います。
今回は、手持ちのMatrox社製のG400を使用します。

 

6.マザーボードのチップファン
チップ用ヒートシンク マザーボードのノースブリッジにチップファンを使用している製品がありますが、できればファンレスヒートシンクを装着したマザーボードを選択するのが一番いいと思います。しかし、どうしてもチップファンを装着したマザーボードを使用する場合には、高性能なチップ用ヒートシンクに交換し静音化を図ります。
今回は、AsusのTUSL2-Cを使用しますので、もともとファンレスヒートシンクになっています。

 

7.ケースファン
ケース内の排熱処理を考えると必要なパーツですが、電源ファンがこの役割を兼ね十分な排熱処理ができる場合にはケースファンを取り除きます。どうしても、ケース内に熱が篭る場合には、30dB以下の静音ファンを装着します。温度によってファンの回転数が可変するサーミスタ内臓ケースファンが最適かと思います。

 

8.ケース本体
ダイポルギー吸音シート ケース本体から出る騒音は、電源やハードディスクなどの振動がケースに伝わりそれが、パネル接合部から発生するビビリ音やケース本体の強度不足による振動が主な発生源です。今回は既存のケースに静音グッズのダイポルギー吸音シートを使用して電源、ハードディスク、ケース本体からの音を吸音し静音化します。しかし、あまり静音効果を期待せずに、無いよりはましという程度に考えていた方がいいと思います。




第三ステップ(熱対策は?)
静音化を進めるとファンレス化になり、ケース内に篭った熱を排熱できなくなってしまうことがあります。静音化を進める上で熱対策にも十分考慮する必要があることに注意しましょう。

熱の発生源
1.CPU
2.ハードディスク
3.電源本体
4.グラフィックカード
5.マザーボード

今回、グラフィックカード及びマザーボードのチップは低発熱なのでヒートシンクのみでも十分な冷却能力があります。熱対策の必要なパーツはCPU、電源、ハードディスクから発生する熱をどのように逃がすか、また、ケース内に篭った熱をどのように排熱するかがポイントになります。

 

1.CPU
CPUコア温度 CPUは、一番発熱量が多く冷却には一番気を使うパーツです。CPUは、電源の空気取り入れ口の近くに位置しているので、CPUの冷却は電源ファンとヒートシンクの性能に左右されます。
それでは、どのくらいの性能のヒートシンクが必要か冷却性能を表す熱抵抗値を計算してみます。熱抵抗値は1W当たりの消費電力に対して上昇する温度を表す数値で、熱抵抗の計算は熱抵抗値(℃/W)=(ヒートシンク温度−冷却風温度)/消費電力で計算できます。
PentiumV1GHzでVcore1.70V時の最大発熱量は26.1Wで最大許容温度は70℃となっています。Celeron1.2GHz(消費電力29.9W)のデータを元にリテールファンの熱抵抗値を計算すると(40-20)/29.9=0.67℃/Wとなります。(PentiumV用とは大きさが若干違うので熱抵抗値は変わってきます)
今回使用したファンレスヒートシンクはコア温度が40℃、気温25℃だったので熱抵抗値は(40-25)/26.1=0.57℃/Wになります。このファンレスヒートシンクはリテールファンよりも高い性能ということになります。本来、厳密に消費電力や温度を測定する必要がありますが、あくまでも概算値として捕らえてください。
上記の熱抵抗値は、電源ファンの風量によっても変わってきます。ファンレスヒートシンクに交換する場合には、電源ファンの性能も十分考慮してパーツ交換を行います。
参考までに左の画像は、ファンレスヒートシンクを使用してSuperπ104万桁を実行した際のデータです。最高温度は47℃まで上昇しましたが、Superπが終了し無負荷状態の40℃までは一気に下がりました。このときの電源ファンの回転数は1,650rpmで室温は26℃でした。

 

2.ハードディスク
Smart Driveにフロントパネル装着 ケース内のハードディスク温度 今回使用したSmart Driveは熱が篭らない設計になっていますが、DTLA35020でテストした結果、通常の使用では29.1℃で消音ケースを使用した場合、30.2℃と約1℃の温度上昇にとどまっていました。
DTLAのハードディスクのチップは以外と発熱していて49℃にも達していました。チップに熱伝導ゲルシートを貼り付けて消音ケース側へ熱を逃がすようにします。しかし、BarracudaATA Wの場合、チップはプレートに覆われていて、このプレートを通してSmart Drive側へうまく熱を逃がすことができます。
IDEケーブル&電源ケーブル接続 ケースのフロント部分もスッキリ Smart Driveには別売でフロントパネルが用意されています。このパネルを使用することにより消音ケースは外気と触れ、ハードディスクの熱を効率よく逃がすことができます。

 

3.電源
静音化を進めると、ハードディスク以外では電源ファンが一番の騒音発生源となります。しかし、電源ファンを静粛性の高いもに交換した場合、電源本体やケース内の排熱処理が追いつかないことがあります。今回は、温度によってファンの回転数が変化するサーミスター内臓のケースファンと交換しました。(30℃→1,450rpm、35℃→2,250rpm、40℃→3,000rpmに可変します)これによって、電源本体とケース内の排熱温度によってファン回転数がコントロールされるので安定した冷却性能が確保されます。また、室温が低い場合にはファン回転数が低くなるので静粛性が高くなります。もし、どうしても電源ファンだけでは排熱処理が追いつかないようであればケース側にケースファンの追加が必要になります。

 

4.スマートケーブル&スパイラルチューブ
スマートケーブル スパイラルチューブ ケース内の空気の流れをできるだけスムーズにするため、標準的なフラットケーブルではなく、スマートケーブルを使用します。また、ケース内には電源ケーブルもところ狭しと這っているのでこれは、スパイラルチューブでまとめてケース内の空気の流れの妨げにならないようにします。

 

5.マザー内臓ビデオ・サウンド
ケース内の熱を逃がすためには、ケース内の空気の流れをスムーズにするのが効果的です。サウンド・カードやグラフィックカードが無い方がよりスムーズに空気が流れます。ビデオ機能やサウンド機能を内臓したマザーボードを使用することによりケース内の空気の流れを妨げるカードを使用しなくて済みますので効果的かと思います。



総 括
静音化を進めると、最終的には回転するパーツは電源ファンとハードディスクだけになりました。静粛性はかなり高くなり任天堂のゲームキューブより静かにすることができました。やはり、CPUファン、ハードディスク、電源を静粛性の高いパーツにするのが静音化には一番効果的のようです。今回、防振シート、制震シート、吸音シートなどの静音グッズを使用しましたが、効果はあまり期待しない方がいいかと思います。
この状態で、真夏の温度を乗り切れるかは不安がありますが、そのときは、排熱処理を再検討してみたいと思います。






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