2017/05/01公開


第4回 グラフィックカードの進化を振り返る


グラフィックカードの進化

私が自作PCを始めたころは、グラフィックカードの主流はPCIバスからAGPバスへと切り替わっていた時期だったと記憶しています。一番最初に購入したグラフィックカードはAGPバスに対応したnVIDIA製ビデオチップのRIVA128を搭載したビデオカードでした。(現在、手元にはありません。)
当時のAGPバスビデオカードはまだ互換性に若干問題がありマザーボードによっては起動しないという相性問題もあったように記憶しています。なにかと苦労しながらパーツを組み上げていき電源投入してPCが起動すると嬉しかったことを覚えています。当時のPCの自作は今以上にハードルが高かったように思います。
現在ではパーツを組み上げるとほとんどの場合、一発で起動して、多少面白みに欠けるところもありますが、パーツの互換性が十分進んだ証かと思います。ここで、少し過去を振り返りグラフィックカードがどのように進化して来たかを現在所有しているグラフィックカードをベースにまとめてみました。

※10年ほど前に途中まで作成していたのを重い腰を上げて今回内容を見直して掲載しました。GPU-Zやベンチソフトなどは当時に情報取得した時のバージョンになっておりかなり古いものになっていますがご了承ください。

1.2D描画主体から3Dアクセラレーション機能追加へ

1) 初期のグラフィックカードは2D描画のみ
初期のグラフィックカードは、2D描画機能のみでグラフィックチップ、RAMDAC(デジタル-アナログ変換回路)、ビデオメモリから構成されていて、内部インタフェースはISAバス、EISAバス、VLバス、MCAバスでした。アキバでこの内部インタフェースを持ったカードを見ることはありませんね。外部インタフェースはアナログRGBのみでD-SUB15ピンのコネクタが使用されていました。現在の最新グラフィックカードではD-SUB15ピンのアナログRGBをサポートしているカードはありません。

2) PCIカードになって3Dアクセラレータ機能が本格的に
バスの主流がISAバスからPCIバスへの移行と共に、PCIバスの内部インタフェースを持ったグラフィックカードが登場し、RAMDACはグラフィックチップに内臓されるようになり、CAD使用を主目的として、線や円、曲線の高速描画やその拡大縮小に関する処理の高速化を図り、3Dアクセラレーション機能も追加されました。

何故か、我が家にはPCIバスのグラフィックカードが1枚あります。ダイアモンドマルチメディア社から発売された製品でS3製のグラフィックチップ「S3 ViRGE/VX」を搭載したグラフィックカードです。このカード知り合いから譲り受けたものですが、一度も使用したことがないので埃の付着は無く、チップの印刷も綺麗で新品同様です。今回、いい機会なので引っ張り出してみました。
PCIカード S3社製 ViRGE/VX (86C988)
製品名 Diamond Multimedia Stealth 3D 3000 rev.A
グラフィックチップ S3社製 ViRGE/VX (86C988)
メモリ搭載量 標準VRAM 2MB (2MB増設、最大4MB )
対応スロット 32-bit PCI 2.1
最大解像度(最大表示色) 640×480 (24bit)、800×600 (24bit)
1024×768 (16bit)、 1280 x 1024 (8bit)
×600 (24bit)又は1024×768 (16bit)の2種類しか選択できませんでした。

S3 ViRGE/VX


PCIバス専用カードと言えば、忘れてはいけないのが3D専用のVoodooカードでしょう。我が家でも、Voodoo2を2枚挿してSLI接続して使用していましたが、3D専用カードであるため2D表示できるカードとの併用が必須でVoodoo2カード単独で使用することはできません。現在、Voodoo2カードは手元に無いので画像を掲載することができないのが残念です。
当時は、ゲームと言えばゲーム専用機の「セがサターン」か「PLAY STATION」を使用していましたが、Voodoo2の3D画像の美しさに魅了されPCゲームの世界へ引き込まれました。Voodooという名前自体がかなり怪しいですけどね。


3) 3Dゲームソフトの発展を加速させたAGPカード、3種類の規格

AGP(Accelerated Graphics Port、アクセラレーテッド グラフィックス ポート)は、インテルが1997年に発表したビデオカードとメインメモリ間の専用バスの規格で、従来のPCIバスだと大量の3Dテクスチャを高速転送するのに限界があったためインテルが専用バスのAGPを開発しました。
AGPは3種類のバージョンがあり、1倍モード(1x)、2倍モード(2x)、4倍モード(4x)、8倍モード(8x)の4種類の速度、3.3V、1.5V、0.8Vの3種類の動作電圧が規格化されています。動作電圧が異なるために回路損傷防止のため電圧によって切り欠きの位置が異なりますが、カード側の切り欠きの設計が不適切だった製品がありマザー側やカード側の回路を損傷し動作しなくなった事例もあったようです。
AGP規格の各リリース
規格 AGP 1.0 AGP 2.0 AGP 3.0
策定年月 1996年8月 1998年5月 2002年9月
信号電圧 3.3V 1.5V 0.8V
速度 1x,2x 1x,2x,4x 4x,8x
AGPクロック/バス幅 66MHz/32bit
最大転送速度 533MB/s 1GB/s 2.1GB/s
切り欠き(突起)の位置 3.3V 1.5V, Universal 1.5V, Universal

手持ちのカードをAGP規格別に整理してみました。カードの切り欠きが同じでも、速度が異なるのもあります。
AGP規格 対象AGPビデオカード

AGP 1.0
・速度:2x
・電圧:3.3V
・3.3V専用スロットで動作

nVIDIA RIVA TNT 3Dfx Voodoo3 3000
AGP 2.0
・速度:4x
・電圧:1.5V
・3.3/1.5Vスロットで動作
Matrox Millennium G400 nVIDIA GeForce2 Ultra nVIDIA GeForce4Ti4600
AGP 3.0
・速度:8x
・電圧:1.5V
・3.3/1.5Vスロットで動作
ATI RADEON9800Pro  
AGP 3.0
・速度:8x
・電圧:0.8V
・1.5V専用スロットで動作
ATI X850XT Platinum Edition


AGP規格毎のカード情報をGPU-Zで取得してみました。
AGP規格別主要グラフィックカードの仕様比較
AGP 1.0 (nVIDIA RIVA TNT) AGP 2.0 (nVIDIA GeForce2 Ultra) AGP 3.0 (ATI RADEON X850XT)



4) 現在主流のPCI Expressカード

PCI Expressは広い帯域幅への需要に応えるために登場したAGPに代わる接続インタフェースで転送速度は AGP x8の約4倍まで到達します。PCI Expressは、2002年にPCI-SIGによって策定された、PCIバスに代わるI/Oシリアルインタフェースです。データ伝送路をレーンと呼び、1レーンで構成されているのが「PCI Express x1」で、1レーン当たりのデータ転送速度は、「PCI Express 1.1」バージョンで250MB/s、「PCI Express 2.0」バージョンでその倍の500MB/s、「PCI Express 3.0」バージョンでその倍の1GB/sとなっています。ビデオカード用インタフェースとして多く使用されているのが16レーン構成の「PCI Express x16」で「PCI Express 1.1」バージョンだとデータ転送レートは双方向4GB/s、「PCI Express 2.0」バージョンだとデータ転送レートは倍の双方向8GB/s、「PCI Express 3.0」バージョンだとデータ転送レートは倍の双方向16GB/sとなります。
PCI Express 規格の各リリース
規格 1.1 (Gen1) 2.0 (Gen2) 3.0 (Gen3)
策定年月 2002年 2007年1月 2010年11月
最大転送速度(x1レーン双方向) 0.25GB/s 0.5GB/s 1GB/s
最大転送速度(x16レーン双方向) 4GB/s 8GB/s 16GB/s

規格 対象カード
PCI Express x16 1.1 ATI Radeon HD2900XT
PCI Express x16 2.0 nVIDIA GeForce GTX260
PCI Express x16 3.0 nVIDIA GeForce GTX970

PCI Express x16 3.0 (nVIDIA GeForce GTX970)


5) インタフェース毎のカード形状

カード規格 カード画像 概要
PCI S3 ViRGE/VXのPCIバスです。
AGP 1.0 AGPの初期タイプでカードの切り欠きは3.3V用です。
AGP 2.0/3.0 3.3Vまたは1.5VのAGPスロットで動作するような切り欠きになっています。
AGP 3.0 1.5V用の切り欠きで3.3V用のAGPスロットに挿入しないようになっています。
PCI Express x16 PCI Express x16のスロットに挿入できるようになっています。


6) オンボードグラフィック

マザーボード上にグラフィックチップを搭載したマザーボードが登場しグラフィックカードを追加投資する必要はありません。最近ではCPU自体にGPUを内蔵したintelのCore i7/i5/i3も登場しています。
ただし、性能的にはローエンドクラスのグラフィックカードクラスと同等ですので高いグラフィック性能を要求するゲームプレイには向きません。
オンボードグラフィックチップ
AMD 790GXチップ
Radeon HD 3300
Intel G45 Express チップ
Intel GMA X4500HD

オンボードグラフィックチップ(Radeon HD 3300)


2.定番ベンチマークソフトで性能比較

現在ではグラフィックカードの性能を計測するベンチマークソフトの代表として「3DMar」がありますが、当時のベンチマークソフトは「HDBENCHI」や「FINAL REALITY」がグラフィックベンチソフトの定番中の定番でした。その後、グラフィックカード及びDirectXの進化と共に「3DMark99」「3DMark2000」「3DMark2001」などが登場しました。
今回「HDBENCHI」「QuakeVARENA」デモ版でベンチマークを取得しました。システム環境はCPU、マザーボードが各々異なりますがオペレーティングシステムはWindowsXP環境に統一してベンチ結果を取得しています。「FINAL REALITY」についてはベンチマークを取得する時間が無かったので紹介だけにしています。

1) 総合ベンチマークソフト「HDBENCH」
国産の総合ベンチマークソフトと言えば古くから使用されていた「HDBENCH」を挙げない訳にはいきません。PCの総合性能を測定するのに必要なベンチ項目であるCPU、メモリ、グラフィック、HDDを測定し総合スコアも表示されるので非常に使い勝手が良かったです。ただし、測定する度に数値が変動しスコアが安定しないという問題も抱えていました。
HDBENCH 3.30

HDBENCH グラフィックベンチ測定中の画面表示
Rectangl Text Ellipse
BitBilt DirectDraw
※デュアルCPUに対応していて、デュアルCPUを測定表示は2分割されます。

HDBENCH 3.30 (解像度:1280×1024)
インタフェース グラフィックカード/グラフィックチップ ALL Rectangl Text Ellipse BitBilt DirectDraw
PCI S3 ViRGE/VX 578 7111 3314 1093 31 0
AGP nVIDIA RIVA-TNT 1472 16137 5548 7640 81 23
3Dfx Voodoo3 2201 24523 8718 10580 157 29
Matrox Millennium G400 2858 40167 5200 11580 161 37
nVIDIA GeForce2ULTRA 5836 66200 35800 14180 467 59
ATI RADEON 9800Pro 4631 57800 21600 12280 883 59
ATI RADEON X850XT PE 5561 79144 20183 10571 1238 85
PCI Express x16 ATI RADEON HD2900XT 2416 24569 13017 7400 3280 41
GeForce GTX260 3331 18654 39812 5653 2457 42
オンボードグラフィック AMD 790GXチップ Radeon HD 3300 3608 37646 19639 14380 557 30
×768(16bit) でベンチマークを測定しています。
「PCI Express x16」のALLの数値はオンボードグラフィックより低く表示されていますが、数値がオーバーフローしているためで実際には桁が違っています。


2) ゲームソフトでのベンチマーク「QUAKE V ARENA Demo」
QuakeVARENAは、解像度800×600 32bit。
QUAKE V ARENA Demo
ベンチマークの取得方法は下記の通りです。
@「漢字キー」+「Shiftキー」を同時に押して、コンソール画面を表示します。
A「/timedemo 1」と入力し「Enterキー」を押します。
B「demo demo001」と入力し「Enterキー」を押すとタイムデモが起動します。
Cデモ終了後、メニュー画面に戻りますので「漢字キー」を押しコンソール画面を表示すると、「fps」のデータが表示されます。

インタフェース QuakeVARENA Demo (800×600)
PCI S3 ViRGE/VX -
AGP nVIDIA RIVA-TNT 22.7 fps
3Dfx Voodoo3 41.7 fps
Matrox Millennium G400 47.0 fps
nVIDIA GeForce2ULTRA 59.9 fps
ATI RADEON 9800Pro 60.4 fps
ATI RADEON X850XT PE 184.8 fps
PCI Express x16 ATI RADEON HD2900XT 464.8 fps
GeForce GTX260 366.9 fps
オンボードグラフィック AMD 790GXチップ Radeon HD 3300 188.4 fps


3) 定番中の定番グラフィックベンチマークソフト「FINAL REALITY」
「FINAL REALITY」は「Remedy Entertainment」というソフト会社が開発元で、3DゲームソフトMAX PAYNE用に作られた3DエンジンであるMAX-FXを使ったベンチマークソフトで「DirectX 5.0」を利用していて1997年に発表しています。「Remedy Entertainment」からのスピンオフ組がカナダに「MadOnion.com」を設立し、3Dベンチマークソフト定番の「3DMarkシリーズ」の最初のバージョンである「3DMark99」を発表しています。「3DMark99」は3Dエンジン「MAX-FX」を「DirectX 6.0」に対応させベンチソフトで、「3DMark2001」まで「MAX-FX」エンジンを使用していました。2002年に「MadOnion.com」は「Futuremark」へと社名変更しています。
「FINAL REALITY」は古くからあるグラフィックベンチマークソフトでDirectX9.0c環境下でも動作する数少ないベンチソフトで、グラフィックの美しさは現在でも目を見張るものがあります。
「MAX-FX」エンジンを使用した3Dゲームソフト「MAX PAYNE」は、かなり前から映画化の噂が流れていましたが、やっと映画化され2009年4月より日本で公開されています。

本家のサイトは既に無くなっていますが、下記のサイトからソフトをダウンロードすることができます。

http://www.scene.org/file.php?file=%2Fdemos%2Fgroups%2Fremedy%2Ffr101.exe&fileinfo

FINAL REALITY 1.01 (解像度:640×480)










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